楚漢名臣列伝 宮城谷昌光

小説
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久々に宮城谷昌光の中国古代ものが出ていたので迷わず買ってみた.

楚漢名臣列伝 宮城谷昌光
楚漢名臣列伝 宮城谷昌光

項羽と劉邦」はかなり昔に司馬遼太郎のものを読んでいたのだが,なんというか,「国盗り物語」などと比べるとそれほど面白いという印象はなかった.

この本は名臣列伝ということで,楚漢の家臣を一人ひとり取り上げて小説にしているので,より深く楽しめた.
項羽と劉邦という非常に対照的なこの二人は「歴史に学ぶ」という意味では大変面白い人たちであるが,家臣からみた二人が描かれているのでとても興味深い.

「張良」「范増」「章邯」「陳余」「蕭何」「田横」「夏侯嬰」「曹参」「陳平」「周勃」が選ばれているが,この中で私のお勧めは「夏侯嬰」と「陳平」である.
「田横」に関しては同じ宮城谷の「香乱記」をお勧めする.
こちらはまさに名作「晏子」などに代表される宮城谷小説の王道をいっていると思う.

さて,夏侯嬰は後の三国時代の曹操の右腕とも言われる夏侯惇の先祖らしいが,義侠の人として有名であった.そのエピソードが語られているが,劉邦との傷害事件の話,馬車から捨てられる劉邦の子供を救った話,楚の臣であった季布を助けた話など本物はこうなのだと感心させられた.その後の呂氏の粛清の網にかからなかったのもうなずける.

もう一人の陳平に関しては処世の術が凄まじい.爽快だ.もともと,項羽の配下であったが恨まれると劉邦の陣営に飛び込み,採用されることになる.その時の劉邦との掛け合いも秀逸だ.陳平を紹介した魏無知という人も素晴らしい.陳平は最終的には呂氏一族を滅亡させるが,自然の流れに任されつつも,その立場で出来ることに全力を注げば道は開けるという見本のような人生であり,歴史に学ぶ醍醐味が味わえる

楚漢名臣列伝 宮城谷昌光
楚漢名臣列伝 宮城谷昌光