逆説の日本史〈2〉古代怨霊編 井沢元彦
ずいぶん昔の本であるが,久しぶりに読み返してみた.
井沢元彦氏の「逆説の日本史」は私にとっては非常に面白いと感じられる本である.
もともと歴史が好きなのだが,まんべんなくどの時代も面白いと思うようになったのはこの「逆説の日本史」シリーズのおかげである.
教科書のような詰め込みの継ぎはぎの教育でなく,この本のような「歴史の流れの背景」を教える授業をすれば本当の歴史の面白さに多数の人が気づくのになあといつも思う.
というわけで,この巻では主に聖徳太子の名前の由来や天智天皇・天武天皇の易姓革命,さらには大仏建立の理由など,どれをとっても興味深い話である.
「天智天皇」が殷の紂王の持っていた「天智玉」という宝石の名前を由来とし,「天武天皇」は周の武王をその名の由来とする.
この話も驚きだが,この「帝謚考」を書いた森鴎外という人のものすごい博識にもさらに驚かされた.
しかし,こういう話を聞くと一体今まで何の歴史を学んでいたんだという腹立たしさまで覚えてしまう.
帝謚考に関しては「森鴎外『帝謚考』から古代の天皇像を探る」にまとめてくださっている方がいる.感謝.
ここにも崇神天皇,応神天皇,継体天皇で「断絶して一新したと解すべき」とある.「逆説の日本史」では,早大名誉教授 水野祐氏の説ということで紹介されているが,ほとんどの日本人は知らないのではないだろうか?
しかし,命名時に意味付けをしっかりしているところがさすがだと感じ入ってしまう.
これにより,後の時代の人間がいろいろ考えることができるようになっているのである.
奈良の大仏の建立理由もとても納得いくもので,その後の延暦寺の建立理由を考えれば,とても自然なことである.
こういう歴史を是非日本人は学ぶべきであろう.
「愚者は経験に学び,賢者は歴史に学ぶ」とビスマルクはいったが,この場合の歴史とは「逆説の日本史」のような歴史の流れの背景を学ぶことにこそあるはずだ.