物乞う仏陀 石井 光太

書評
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久々に衝撃を受けた.

この本はアジアにいる貧困者の実態をインタビューによって紹介している.
私自身,インド,ベトナム,マレーシアなどを旅行したことがかなり以前にあるのだが,そのときインドだけは今後,遊びで行くことはないだろうと思っていた.それは町の雰囲気が怖いというだけでなく,道端で死んでるのか寝てるのか分からない人々を見たり,指の無い子供を抱えた乞食が「金を恵んでくれ」と寄ってくる姿に対して,何もできない自分に耐えられなかったからだ.
正直逃げていた.
この本では実はそれがマフィアによって指を切られた子供だったという衝撃的な事実が告げられている.
そのときは先天的な障害者だと思っていたのだが,この本を読むと「これはありうる.」と実感できた.
私の場合,デリーでこのような人々をみて,この本ではデリーではそういうことはなく,ボンベイでのことだと書かれていた.
実際,私が行った時,ボンベイではあまり気づかなかったのだが,まあ場所は問題ではない.
やはり,「遊びで行く国ではない」と思った直観は正しかったのだ.
知ったからといって,私にはどうすることもできないのだが,同じ地球上にこういう人々がいることを知っているというのは大事なことだと思う.
作者は若いのにたいした行動力と探究心を持っている.
私も若いときに行ったのだが,乞食を見ても,「なぜ乞食になったか」という根本的な疑問を持つことは無かった.
国によっても,また同じ国でも場所によってさまざまな事情があるということだ.
貴重なレポートだと思う.
インドや東南アジアに旅行に行こうと思われている方には一読をお勧めする.